エスカレーターの効率の計算

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以前、「エスカレーターで片側を歩くと運搬効率が悪くなる理由を教えます」で、エスカレーターは2列に並んで歩かずに乗ることが効率を上げるといった趣旨の内容を書きました。

今回は、それをデータで示してみます。但し、このシミュレーションは条件を固定した一例ですので、必ずしも実際の現場では一部の条件が一致したとしてもデータと同様の結果になるとは限りませんのでその点ご了承願います。

エスカレーターのスピードと歩く速さ

エスカレーターを歩く人は、「なるべく早く先に行きたいから」というのが理由のひとつにあると思います。エスカレーターを歩いたからこそ、何かに間に合ったという人もいるでしょう。

では、短縮できた時間は一体どの程度のものだったのでしょうか?

エスカレーターの速度は機械の設定しだいで可変できますが、だいたい一般的には分速30mよりも少し遅いぐらいに設定されています。分速30mを秒速に直すと、0.5m/秒になります。1秒間に50cm進みますから、1m進むのに2秒掛かるということになります。

今、エスカレーターを下から仰ぎ見て、手すりのベルトの長さがだいたい30mぐらいあるエスカレーターを思い浮かべてみると、そのエスカレーターに乗って頂上まで行くには、分速30mなので、ちょうど1分掛かるということになります。

さて次に、歩くペースを考えます。エスカレーターを歩く人も、さすがに駆け上がったり駆け下りたりすることはないと思います。そう信じています。※周りの人が危ないので絶対にやめてくださいね。

歩くペースは・・・トン・トン・トン・トン・ヒノノニトン!

こんなペースでしょうか?これって、1秒間に2段ぐらい進めます。でも実際、エスカレーターではこんなに早く歩けませんよね?だから、今は最大の速さがこのペースと考えます。というか、ぶっちゃけ、ここでは歩く速さはどうでもよいという結果になります。どないやねん!

歩くとどれだけ時間を短縮できるのか?

このように考えます。「エくかレーターを1段歩いて登ると、エスカレーターのステップ1個分だけみんなより先に進むことが出来た」と考えます。では、立ち止まっている人のステップ1個分が自動で進むのに何秒かかるのでしょうか?

答えは、だいたいですが、0.8秒ぐらいです。(但し、エスカレーターのスピード設定やステップのサイズによって異なります)エスカレーター1段進むのに、0.8秒掛かる。

さあ、ここまで来れば後の計算は簡単です。以後は、計算の苦手な人でもわかりやすいような数値を使って計算しておりますのでどうぞご安心を。

(質問)あなたは、今、目の前にあるエスカレーターを上り切るまでに何歩歩きましたか?

仮に10歩、歩いたとします。そうすると、10歩×0.8秒(1段分)=8秒

これは、8秒得をしたということを表しています。わかりましたか?計算が簡単ですね。

立ち止まっていたら、電動の力で8秒(0.8秒×10段)掛けて動いたはずの10ステップ分を自力で10歩、歩いたので、その分8秒間を短縮できたという話です。これで歩く人の効率は何となく見えました。歩けば歩くほど効率が上がるということですね。

さあ、いつもエスカレーターを歩いている人は、それを意識してエスカレーターに乗ってみてください。そのエスカレーターでは何歩歩けましたか?意外と本人が思っているほど時間が短縮できていないのではないでしょうか?それとも、やっぱりその時間は貴重でしょうか?

エスカレーターの片側乗りはこんなにもロスがある

さて次に、エスカレーターの運搬効率と言う観点から考察します。

エスカレーターのステップが2人乗り用である場合、日本では半ば常識のように片方を空けて乗っている人が多いです。

この記載で誤解なきようお願いしたいのは、片側に寄るという行為自体は、機械の安全性の観点からは特に問題があるわけではないと思っています。但し、その行為が思わぬ危険性とロスを招いているということを言いたいだけなのです。危険性を招くとは、片側に寄って道を空けることによって、歩く行為が助長され、そのことにより事故の危険性が増すという意味です。危険性はさておき、今回はこの片側乗りが、いかに運搬効率のロスを生んでいるかということを、データを用いて簡単にわかりやすく説明していきます。

エスカレーター条件の設定

まずは、運搬効率を計算するにあたって、使用するエスカレーターの初期条件を以下のように決めておきます。

  • 1秒間に1ステップ進みます。(先ほどの例では0.8秒でした)
  • 1ステップは2人乗りです。
  • 立ち止まった場合、頂上までは30秒で到達するエスカレーターです。(つまり、ステップが30段あるということです。)
  • 一度に利用する乗客は300人とします。

また、お客さんを如何に早く安全に運ぶかという観点から、以下の各パターンにおいて、1人目のお客さんがエスカレーターに乗り始めてから、300人目のお客さんがエスカレーターを登りきるまでの通算の時間を比較していきます。計算がごちゃごちゃしていて見たくないという人は、下のほうに表にしてまとめておりますのでスクロールして下まで飛ばしてください。

シミュレーション結果

パターン1(理想形):全員が立ち止まって両側乗りをした場合

乗客は300人いる。
乗客はステップの両側に乗るので、1ステップに2人乗れることになる。
300人全てを乗せるだけなら
300人÷2人ずつ=150ステップが必要です。

今、目的は、300人全員を上まで運ぶことだということを思い出してください。

すると、最後の2人を乗せたステップを30ステップ上の頂上まで運ばなければ完了しないということになります。ということは、お客さん全員を乗せる150ステップに最後のお客さんを上まで運ぶ30ステップを足すことで運搬作業は完了することになります。150ステップ+30ステップ=180ステップ です。初期条件で、1ステップ進むのに1秒かかるのだから、180ステップ=180秒となる。(簡単に計算ができるように、わざとそういう設定にしています)つまり、理想形では、300人のお客さんを全員頂上まで運ぶのに180秒で完了するという結果になりました。さて、これを基にいくつかのパターンを次々に計算していきます。計算が嫌いな人はやはりすっ飛ばしてください。

パターン2:全員が左側に寄って乗る(最悪パターン)

このパターンが考えられるのは、歩く人がいるだろうと乗客全員が警戒しながらエスカレーターに乗ったが、結局誰一人として歩く者はいなかったという場合です。300人全員が左側に一列で並んで1ステップに一人ずつ乗るので、乗り込むだけで300ステップ分が必要になります。さらに、最後に乗ったお客さんを30ステップ分先の頂上まで届けなければならないので、結果として、300ステップ+30ステップ=330ステップ分が動いた時点で運搬完了となります。1ステップ1秒なので、330秒で完了となります。

次からは、右側を歩く人が出現し始めます。

パターン3:10%(30人)の人が右側を歩く場合
立ち止まる(左):270人 > 歩く(右):30人

立ち止まる人の数が歩く人よりも多い場合は、立ち止まるお客さんを運ぶのに掛かった時間を計算するだけで良いということになります。(歩く人はその間にどんどんいなくなるという理屈からです)計算すると、270ステップ+30ステップ=300ステップで300秒となります。これを基に残りのパターンは簡単に記述していきます。

パターン4:20%(60人)の人が右側を歩く場合
立ち止まる(左):240人 > 歩く(右):60人

240+30=270秒

パターン5:30%(90人)の人が右側を歩く場合
立ち止まる(左):210人 > 歩く(右):90人

210+30=240秒

パターン6:40%(120人)の人が右側を歩く場合
立ち止まる(左):180人 > 歩く(右):120人

180+30=210秒

パターン7:50%(150人)の人が右側を歩く場合
立ち止まる(左):150人 = 歩く(右):150人

150+30=180秒

さて、上記の結果をまとめると下表のようになりました。
esukare-ta-hikakuhyou
以下に、表の読み方を説明していきます。表は最も理想とするパターン1の両側乗り(理想形)と、現在、日本で蔓延(はびこ)っている片側乗り(パターン2~パターン7)を比較したものです。

こんなに不利益を被っているお客さんがいる

一番見ていただきたい欄は「不利益を被ったお客さん」の欄です。簡単に言うと、ここにある数字は、「人数」と「時間」の両方を同時に現しています。表中の数字が150なら、150人が150秒の不利益を被ったということを意味しています。そのつもりで以下を読み進めてください。パターン2から説明していきます。

説明を読むのが面倒な人は、やはり下までスクロールして「シミュレーションから分かったこと」を読んでください。

パターン2は、歩く人は0%なのに片側乗りをした場合です。この時、お客さんがいなくなるまでの時間は330秒で、理想の両側乗りに比べて150秒多く時間を要したことになります。不利益を被ったお客さんの人数は150人で、その残念な人の割合は全体の50%になります。そして、最後尾に並んだ最も残念なお客さんがエスカレーターに乗り込むまでに要した待ち時間は300秒(5分)です。

同様にパターン3を説明します。パターン3は、歩く人が全体の10%の場合です。この時、お客さんがいなくなるまでの時間は300秒で、理想の両側乗りに比べて120秒多く掛かったことになります。不利益を被ったお客さんの人数は120人で、その残念な人の割合は全体の40%になります。そして、最後尾に並んだ最も残念なお客さんの待ち時間は270秒(4分半)となりました。

パターン4を説明します。パターン4は、歩く人が20%の場合です。この時、お客さんがいなくなるまでの時間は270秒で、理想の両側乗りに比べて90秒多く掛かったことになります。不利益を被ったお客さんの人数は90人で、その残念な人の割合は全体の30%になります。そして、最後尾に並んだ最も残念なお客さんの待ち時間は240秒(4分)となりました。

パターン5を説明します。パターン5は、歩く人の割合が30%です。この時、お客さんがいなくなるまでの時間は240秒で、理想の両側乗りに比べて60秒多く掛かったことになる。不利益を被ったお客さんの人数は60人で、その残念な人の割合は全体の20%になりました。そして、最後尾に並んだ最も残念なお客さんの待ち時間は210秒(3分半)です。

パターン6を説明します。パターン6は、歩く人が40%の場合です。かなり割合としては多いです。この時、お客さんがいなくなるまでの時間は210秒で、理想の両側乗りに比べて30秒多く掛かったことになり、不利益を被ったお客さんの人数は30人で、その残念な人の割合は全体の10%になります。そして、最後尾に並んだ最も残念なお客さんの待ち時間は180秒(3分)となりました。

最後にパターン7を説明します。パターン7は、歩く人と立ち止まる人が50%ずつの場合です。この時、お客さんがいなくなるまでの時間は180秒で、理想の両側乗りと同様の時間になりました。不利益を被ったお客さんはおらず、最後尾に並んだお客さんの待ち時間も理想と同様となりました。

シミュレーションから分かったこと

ここで分かったことは、歩きたい人が全体の50%を超えれば、時間的ロスはないということになります。しかし、安全性の観点からは歩く人の割合が増えるにつれてリスクが増大していくことになります。気を付けましょう!

それはそうと、実際のところ、歩くお客さんって10%~20%ぐらいの間ではないですか?皆さんはどう感じているでしょうか?仮にその推測が正しいとすると、表のパターン3と4の間ということになり、わずか10数%のお客さんのたった数秒の利益のために、30%~40%のお客さんが1分半~2分の損失を被っているということがわかります。これは、電車の乗り換えのシーンを想定して言えば、10数%のお客さんがわれ先にと急いだがために、30%~40%の人が無用の遅延に見舞わされるとも言えます。関東は左で関西は右に並ばなきゃ駄目だよ、とか言ってる場合じゃないですよ。エスカレーター(2人乗りタイプの場合)はみんな2列に並んで乗りましょう!

今回は、運搬効率についてシミュレーションしてみました。エスカレーターに乗る機会があれば、ちょっと意識してみませんか?

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コメント

  1. 名無し より:

    結論は、
    >歩きたい人が全体の50%を超えれば、時間的ロスはないということになります。
    ですね。
    それどころか、
    パターン9:歩く人の割合70% なら、パターン1より輸送効率が高いです。スループット(単位時間当たりの輸送量)が パターン1:60人/分 に対し パターン9:100人/分に達します。
    勿論、こんなのでは歩き車線は車間距離不足高速道路のようになって危険なのは間違いなさそうですが(安全上パターン5くらいまでが限界と言いたくなりますが…)、
    スループットが低いと、混雑駅では電車が到着してエスカレーターに出来た列が次の電車が来るまでに捌けない⇒列がどんどん長くなり、ホームが一杯になり、そのうちホームから線路に落ちる人が出て・・・ このほうが余計危ない。仕方なく 混雑駅ではパターン9で妥協することになります。