会うは別れの始め

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この世では出会った人とは必ず別れなければならない。疎遠になっていた人ならいざ知らず、昨日まで一緒に働いていた人と永遠に会えなくなるという経験はできればしたくないものである。出会ってからは20年にもなるが、より近い関係になったのが1年前。一般に人と人との関係性はその距離感によって違ってくる。遠くの位置から見ていた時、その情報の少なさからうわべの情報が僕の中の彼を作り上げる。そして、近くに来ると、その人の本当がわかる。身近で感じるその情報こそ真の情報に近い。しかし、意外にも遠くからの情報と身近で感じる情報にはほとんど差がなかった。良い意味で人間臭い人だった。そして嫌味のない人だった。惜しい人を亡くし、僕はそれから数日の間、ずっと上の空だった。ようやく吹っ切れたのは、ある夢が切っ掛けであった。二人の外国人が我々の仕事場に入ってきて、突然、そのうちの一人の姿がまるでSF映画のワンシーンのように亡くなった彼に変身したのである。すぐに僕はそれが彼の魂だと悟り、驚きもせずその状況を受け入れた。彼はこう言った。5月の予定はどうなってる?僕は彼ありきの予定を詳細に報告した。彼が亡くなったのは4月である。確かに彼はずっと5月の予定を気にしていた。僕の報告を聞いた彼は「ありがとう。わかった。あとはみんなに任せたよ。」と言って、姿を元に戻した。それはもしかすると僕の期待していた通りの言葉だったかもしれない。あれから1か月、ようやく僕は平静を取り戻した。彼は今でも僕の記憶で生きている。

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